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岐阜地方裁判所 昭和27年(ワ)171号・昭27年(ワ)119号 判決

原告 上田源一

被告 小栗多賀市 外二名

参加人 伏屋清三郎

一、主  文

原告に対し被告安藤厳は岐阜市長良字鵜飼屋百十番の一家屋番号同所西七番木造二階建居宅建坪二十九坪五合、二階坪二十坪(以下単に家屋番号西七番の家屋と称する)の被告島田鉄雄は、同所家屋番号西七番の二土蔵造瓦葺二階建倉庫建坪七坪五合、二階坪五坪(以下単に家屋番号西七番の二の家屋と称する)の各明渡をせよ。

参加人の請求は之を棄却する。

訴訟費用中原告と被告安藤厳、同島田鉄雄間に生じたる分は同被告等、参加に関して生じたる費用は参加人の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は原告に対し被告安藤厳は、主文第一項掲記の家屋番号西七番の家屋の被告島田鉄雄は家屋番号西七番の二の家屋の各明渡をせよ。訴訟費用は同被告等の負担とするとの判決並仮執行の宣言を求め、参加人の請求に対し参加人の請求は之を棄却する参加により生じたる訴訟費用は参加人の負担とするとの判決を求め、被告安藤厳、同島田鉄雄訴訟代理人は原告の請求は之を棄却する、訴訟費用は原告の負担とするとの判決並被告等敗訴の場合には担保を条件として仮執行を免るべき旨の宣言を求め、参加人訴訟代理人は原告及被告小栗多賀市は主文第一項掲記の家屋番号西七番の家屋が参加人の所有なることを確認する。参加により生じたる訴訟費用は原被告の負担とするとの判決を求めた。

原告訴訟代理人は請求原因として、主文第一項掲記の家屋番号西七番の家屋及同七番の二の家屋はいずれも原告の所有であるが、被告安藤厳は右西七番の家屋に、被告島田鉄雄は同西七番の二の家屋にいずれも何等の権原なくして居住し、之を不法に占拠しているから原告はここに同被告等に対し、各その占有家屋の明渡を求めるため本訴を提起した旨陳述した。

被告安藤厳、同島田鉄雄訴訟代理人は答弁として、原告主張事実中、被告等がいずれも原告主張の家屋に居住し之を占有していることは之を認めるが、その余の事実は之を否認する。即ち、原告主張の西七番の家屋は参加人伏屋清三郎の所有家屋であり、西七番の二の家屋は被告小栗多賀市の各所有であつて原告の所有ではない。而して、被告安藤厳は参加人伏屋清三郎から、同島田鉄雄は被告小栗多賀市から参加人伏屋清三郎を介し、いずれも昭和二十三年十一月頃その居住家屋を賃借し居住するに至つたものであるから原告の請求に応じがたいと述べた。

参加人訴訟代理人は参加の理由として原告は被告小栗多賀市を相手方として、岐阜市長良字鵜飼屋百十番地の一宅地九十五坪二合五勺が原告の所有なるに拘らず、被告小栗多賀市は何等の権原なくして右地上に前記家屋番号西七番の家屋及同西七番の二の家屋を所有していることを理由として、右家屋を収去して土地明渡を求める旨の訴を提起した。然し乍ら、右家屋中家屋番号西七番の家屋は参加人が昭和二十二年十一月頃、被告小栗多賀市から贈与を受けたもので参加人の所有である。而して、被告小栗多賀市も亦右家屋が自己の所有であるとなして応訴するものの如くであるから、参加人は原被告双方を相手方として右家屋番号西七番の家屋の所有権確認を求める為参加の申出をなしたものである。尚原告は参加人の参加申出後被告小栗から前記二戸の家屋を買受けたりとして被告小栗に対する本訴を取下げたものであると述べた。

原告訴訟代理人は右に対し、参加人がその主張の家屋番号西七番の家屋を被告小栗多賀市から贈与を受け、右家屋がその所有となつた事実は之を否認する。即ち、右家屋は原告が昭和二十七年十二月二十二日被告小栗多賀市から買受け之が登記手続をも既に完了したものである。従つて、仮に参加人がその主張の如く被告小栗多賀市から本件家屋の贈与を受けたとしても、参加人はその登記を経ていないからその所有権取得を以て原告に対抗し得ないものであると述べた。

参加人訴訟代理人は右に対し原告が本件家屋番号西七番の家屋につき、原告主張の如き登記手続をなしたことは之を認める。然しながら、原告は参加人が右家屋を被告小栗多賀市から贈与を受けたこと従つて参加人の権利を害することを知りながら、被告小栗と共謀の上同被告から右家屋を買受けその登記手続をなしたものであつて、原告及被告小栗多賀市は共同不法行為者である。従つて、原告は右家屋に関して参加人の登記の欠缺を主張し得べき正当の利益を有しないものであると述べた。

原告訴訟代理人は右参加人主張事実は之を争うと述べた。

被告小栗多賀市は参加人の参加申出後適式の呼出を受けながら、本件口頭弁論期日に出頭せず参加人の主張に対し答弁書其の他の準備書面をも提出しない。

<立証省略>

三、理  由

一  原告と被告安藤及被告島田の関係、

成立に争のない甲第三号証の一、二によれば本件家屋番号西七番及同七番の二の各家屋がいずれも原告の所有であることを認めることが出来、被告安藤が前者の家屋に、被告島田が後者の家屋に居住し、夫々之を占有していることは当事者間に争がない。

被告安藤は参加人伏屋清三郎から、被告島田は参加人伏屋清三郎を介して被告小栗多賀市から夫々居住家屋を賃借している旨抗争しているからこの点について検討して見よう。前記甲第三号証の一、証人大塚鍵次の証言、同証言により成立を是認すべき丙第一号証参加人本人伏屋清三郎の供述を綜合すれば、被告安藤の居住している家屋番号西七番の家屋は、参加人伏屋清三郎が昭和二十二年十一月頃被告小栗多賀市から無償にて贈与を受けたものなること、その後、参加人が登記手続を経ない間に原告が昭和二十七年十二月三日之を被告小栗多賀市から買受け之が登記手続を経たこと、原告が右家屋を買受くるに先立ち、昭和二十三年十一月頃より被告安藤厳は参加人伏屋清三郎から無償にて借受け引続き現在に至る迄居住していることを認めることが出来る。而して、右の場合登記を有しない参加人伏屋清三郎が、その所有権取得を以て登記を有する原告に対抗し得ざること勿論であるが、参加人伏屋から適法に借受けた被告安藤の右家屋に関する権利が之により当然原告に対抗し得ざるものとなるかに関しては、それが賃借権なるときは格別(昭和四年三月一日言渡大審院判決民集八巻一五二頁参照)本件の場合は被告安藤の権利が使用貸借上の権利であること右認定の通りであるから、当然借家法第一条の適用の余地なく、被告安藤の権利は如何なる意味においても原告に対抗し得ないものといわなければならない。又成立に争のない甲第三号証の二、参加人伏屋清三郎の供述を綜合すれば、被告島田の居住する家屋番号西七番の二の家屋は被告小栗多賀市から訴外井藤浦吉を経て原告に譲渡せられ、昭和二十七年十二月二十三日原告がその取得登記をなしたこと被告小栗の所有当時、被告島田が参加人伏屋清三郎から右家屋を無償にて借受け居住するに至つたことを認めることが出来るが、参加人伏屋が之を他に貸与する権限を有し有効に被告小栗との間に貸借関係が成立したとの被告島田の主張事実については之を認むるに足る証拠がないのみならず、仮に被告小栗との間に有効なる貸借関係が成立したとしても、被告島田の権利も亦、使用貸借上の権利であること右認定の通りであるから、前同様の理由により之を以て原告に対抗し得ないものといわねばならない。

二  参加人と原告及被告小栗の関係、

原告が被告小栗に対し原告主張の如き訴訟を提起し、参加人の参加申出後、原告が被告小栗に対する訴を取下げたことは記録上明白である。而して参加人は本件家屋番号西七番の家屋は参加人の所有である旨主張し原告は之を争つているが、被告小栗多賀市は特に之を争う意思を明にしていない。然しながら、原告と被告との間には必要的共同訴訟の関係があるから、原告の争つた限度において被告小栗も争つたものとみなされねばならない。そこで、本件家屋の所有権の所在について検討して見よう。成立に争のない甲第三号証の一、二証人大塚鍵次の証言同証言により成立を是認すべき丙第一号証成立に争のない丙第二号証の一、二同第三号証、同第四号証の一、二同第五号証の一乃至五同第六号証の一乃至三同第七号証、参加人本人伏屋清三郎の供述によれば、本件家屋番号西七番の家屋は前段認定の通り当初参加人伏屋清三郎が被告小栗多賀市から無償にて贈与を受けたこと、並その登記手続をなさざる間に原告が更に被告小栗多賀市から買受け、その登記を経たものなることを認めることが出来る。而して、右の場合参加人伏屋清三郎はその所有権取得を以て原告に対抗し得ざること、従つて右家屋は原告の所有と認むべきであつて参加人主張の如くその所有と認むべきでないこと前段前記被告等の関係において判断した通りである。

参加人は原告は被告小栗と共謀して参加人の権利を害すべきことを知りながら、右家屋を買受けた不法行為者であるから、原告は参加人の登記の欠缺を主張し得べき第三者でない旨抗争しているが、仮令参加人主張の如き事実があつたとしても、参加人が不法行為を理由として原告に対し損害賠償をなす場合は格別、本件の如く二重譲渡の場合における権利取得の優劣を決するについて、相手方が善意なりや悪意なりや参加人主張の如き害意ありや否やは何等の関係を有せず、悪意者、害意者と雖も登記の欠缺を主張し得べき正当な利益を有するものといわねばならない。

以上の理由により被告安藤、同島田に対しその居住家屋の明渡を求める原告の請求は理由があるから之を許容するが、本件家屋の所有権確認を求める参加人の請求は失当であるから之を棄却し、尚原告が仮執行の宣言を求める部分は本件は仮執行の宣言を付せないのが相当であると認めたから之を却下し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条第九十三条第二項本文を適用し主文の如く判決する。

(裁判官 奥村義雄)

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